
結婚式の聖歌隊、それは、新郎新婦の脇にいて、厳かな讃美歌を歌うおしごと。
「聖歌隊は、天使のイメージですっ!」なんて言われちゃったりするので、いつもは
すまぁした顔をしてお仕事しています。
でも、でも、結婚式は一生に一度の「晴れの日」。
新郎新婦はもとより、ご両親や親戚などの列席者も緊張しちゃうんですねぇ。
ここでは、聖歌隊の席から実際に目にしてきた数々のエピソードを
脚色なしで、そのまんまお届けします。ハンカチの用意はいいですか?
涙あり、笑いあり、すべてのご家族に幸あれ・・・!!

その1:「お、お父さん・・・!」
結婚式の前には、新郎新婦、ご両親、お仲人さんが、牧師様とリハーサルをします。
教会式では、新婦はじぶんの父親と腕を組んで入場してくることがほとんどです。
列席者の間の狭い通路を歩いて、祭壇の前で待つ新郎に新婦を手渡すのですが、
この日の花嫁とその父親はとっても元気な親子で、「ちょっとお父さん、あたしのドレス
踏まないでよ!」「おまえがデブだから通路が狭いんだ!」という調子で、
リハーサルの間中ずっとにぎやかに笑っていたのです。「では、いい式にいたしましょう」と
リハーサルを終え、いざ本番。新婦とお父様が入場してきました。
神妙な顔でバージンロードを歩いてきます。何度みてもこのシーンは胸にじんときます。
そして、新郎の前まで歩いてきました。ところがお父さん、新郎に新婦の手を渡しません。
段取りを忘れちゃったのかな?と、牧師様が促そうとしたその時。
お父様が、突然大きな声で新郎に話し掛けたのです。
「おい、○○君。わたしはこの娘をおまえに渡したくない。
でも、娘が惚れたというなら仕方がない。おい、娘をしあわせにしてくれるか。
絶対しあわせにしてくれるのなら、どうぞ連れていってくれ!いいか!頼んだぞ!」
・・・花嫁側の列席者は涙の渦。新婦は感極まって声を上げて泣いていました。
お父様も、その後式の間中ずっと、歯を食いしばって上を向かれて、涙をこらえていました。
ああ、すてきなご家族だなぁと、もらい泣きしながら感動した結婚式でした。
![]()
その2:「あっ、ダイヤモンドが!!」
結婚式のハイライトとも言える、指輪交換。新郎新婦が結婚を宣言した後、厳かに行われます。
あの日も、式は順調にすすみ、指輪交換となりました。
新郎が新婦の手を取り、指輪をはめます。
聖歌隊は祝福の讃美歌を歌い、その場を盛り上げます。
その時、「ころころころ・・・」と、新郎新婦の足元のほうからなにかが転がっていきました。
「なんだろう?」と目を凝らすと・・・なんとそれは、ダイヤモンドでした!
どうやら、新婦の結婚指輪から外れてしまったようなのです。
しかし、式の途中。牧師さまはもちろん、列席者の誰もそのことに気がついていません。
新郎は一生懸命指輪をはめてあげています。
どうしよう・・・。わたしともうひとりの聖歌隊は顔を見合わせました。
拾いたいけれど、式の途中に聖歌隊がうろうろして拾い物をするのは見苦しい。
(式はビデオ撮影がはいっていました)でも、目を離したらどこかへ見失ってしまいそう。
ましてあの上をウェディングドレスで歩いてしまったら・・・!(>_<)
結局わたしたちは、新郎新婦が退場する時にみんなのほうに振り向くのを利用して、
新婦のドレスの裾をなおすふりをして、ささっとダイヤを拾い上げました。
そして式の後、新郎新婦のご両親にそっと声をかけ、「実はこれが・・・」とわけを話して
そのダイヤモンドを引き取っていただいたのです。
ご両親が目を丸くしていたのは言うまでもありません。(^-^;)
![]()
その3:「け、健康サンダル!?」
わたしたち聖歌隊は、その日は新郎のご両親側で歌を歌っていました。
なので新郎のご両親の様子はとってもよくわかるのです。
その日、リハーサルの途中、聖歌隊の相棒がわたしの脇をつつきました。
「?」と顔を見ると、「(新郎のお父さんの足!!足元みて!!)」と
小声で一生懸命言っているのです。あしぃ?と、視線を向けると
な、なんと、お父様の足元は「健康サンダル」だったのです!!!
・・・なぜ?どうして?わたしの頭の中は真っ白になってしまいました。
髪は整髪料でびしっと整え、モーニング姿もりりしいお父様の、足元だけ健康サンダル。
何かのまちがいだろうか。どこかで間違って履いたまま、足元だけ気づかずに
いままで来てしまったのかもしれない。それならさりげなく教えてあげたほうがいいのか。
「でも、ひょっとして足を怪我していて、ぎりぎりまでサンダル履いているのかも・・・」と
相棒がささやきます。そうか、そうかもしれない。わざと履いているのなら、注意したら失礼だ。
それにしても、モーニングに健康サンダル・・・。強烈すぎる組み合わせでした。
リハーサルの後はすぐ本番です。聖歌隊はその場を離れることはできません。
私たちは祈るような気持ちで、入場してきた新郎のお父様の足元を見ました。
みごとに、健康サンダルのままでした・・・。
もう、頭の中は「健康サンダル」でいっぱいです。何をどう歌ったかも憶えていません。
いつもはじーんとして聞いている牧師様のお話もまったく耳に入りませんでした。
「この式が終わったら、次は親族の写真撮影のはず。
一生残る大事な写真に、け、健康サンダルが!あぁぁどうしたらいいの!?」
式が終わり、新郎新婦が退場する時も、私たち聖歌隊は歌を歌わなければなりません。
リハーサルで、新郎新婦が退場した後にいっしょについていかないでください、と
ご両親にお願いするのですが、(最後に牧師様からの説明があるため)
ときどき後ろからついていってしまうご両親がいらっしゃいます。
その日のご両親も、なんとそのままついていってしまいました・・・。
私たちは歌を止めることもできず、歌いながら追いかけることもできず(^-^;)
健康サンダルのお父様は列席者の間をずんずんと行ってしまわれました・・・。
あのご一家の記念写真はどうなったのでしょうか。
披露宴までにだれかが健康サンダルに気がついたでしょうか。
お身内の方が一番に気がつかれていればいいのですが・・・。(^-^;)
![]()
その4:「事前に教えてくれていれば・・・。」
結婚式を何件もやっていると、しばしば「花嫁さんはおめでたです。」というカップルに
出会います。妊婦さんということですから、私たちも、それなりに気を使います。
なんてったって、重たくて身体にフィットしたウェディングドレスを着て、リハーサルから
本番まで立ったまま緊張しっぱなしでいることになるんですから、普通の体調でも
すごく疲れるものなんです。ましてや身重ならなおさら!!
ですから、事前にそのことがわかっていれば、私たちは「空調が強すぎないように」とか
「牧師様の話が熱が入って長引いたりしないように」など、ささやかながら
気を回すことができるのです。
ところが、時としてこうした情報が事前に入ってこない時があるんです・・・。
あの日、牧師様が熱心にお話しをしている途中に、新婦の顔が次第に曇っていくのが
わかりました。汗をかかれているようなので、介添えさんがさりげなく
ハンカチを持っていきながら、「お椅子お持ちいたしましょうか」と言ったのですが
大丈夫です、とお返事されたようです。
ところが、お話の最後の方になって、新婦がぐらっと倒れそうになってしまったんです!
新郎があわてて支え、介添えさんも椅子を持って飛び出したのですが
大丈夫、大丈夫と椅子を固辞されます。それからは牧師様も心持ち早口になって
無事式を終わらせたのですが、後になって「実は5ヶ月だそうです」とお話しがありました・・・。
どうやら、そのことはごく内輪の人間しか知らせていなかったようです。
もう、こういうことは、ぜひとも!!事前にアナウンスしておいて欲しいです。
妊婦さんだと着物はつらいだろうという配慮なのか、チャペルウェディングでは
身重の新婦さんは意外とたくさんいらっしゃいます。中には、おめでたの事実を
あまり口外したくないというお考えの方もいらっしゃると思いますが、私たちも、
知らなかったばかりになにも気遣いできず、その結果、一生の記念となるべき式の最中に
花嫁が倒れてしまった!なんてトラブルが起きてしまうのは、とても残念です。
せっかくの式ですもの、いい思い出だけで終わって欲しい。
脂汗をたらして、苦痛にゆがんだ顔の新婦さんをみるのはつらいのです。
どうぞ、遠慮なさらず、「ひとつよろしく」とお声がけしてくださいね!!
![]()
![]() |
ほんとに、いろんなことがあります。 ご両親・親戚一同の乗った飛行機が雪でフライトが大幅に遅れて 挙式時間が大幅にずれこんだり。 「誓いのキスはなさいますか?」の質問に、新郎が照れながら 頷こうとした瞬間、新婦が有無を言わさぬ口調で 「絶対したくないんですけど」と言い切ったり。 (さすがに一瞬空気が張り詰めました(^-^;) 結婚式。披露宴とはまた違った、厳粛な儀式の瞬間です。 リハーサルのときから大きな風呂敷包みを大事そうに抱えていたお母様は 本番のとき、そっと包みを開きました。 中から、お父様の遺影が出てきました・・・。 目頭を押さえながらも、お写真をしっかり娘さんのほうに向けていたお母様。 私も、歌えなくなりそうなぐらい ぐっときてしまいました。 やっぱり、結婚式は、一生に一度の、晴れの舞台なのです。 |